RENOVATION INTERVIEW

お施主様の体験談を交えた“リアルで飾らない”リノベーションストーリー

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No.006

リノベーションインタビュー
物件:ご自宅リノベーション
工事費:800万円

暮らしをとことん楽しむ。築30年マンションを丸ごと70年代アメリカンヴィンテージなリノベ空間へ

東京都目黒区鷹番/1988年10月築/RC造マンション/80.07㎡/3LDK

東京目黒の学芸大学商店街の一角。秋にオープンしたばかりのCuestudioリノベーションショップの前を、お施主様が偶然通りかかったことからすべてが始まりました。店内ディスプレイとして壁一面に造作した構造用ラーチ合板仕上げのグリッド棚に一目ぼれし、「ずっと欲しいと思っていた」と現状のご自宅を見にお招きいただいた先は、歩いていける距離に佇むマンションでした。そうしてお話を伺ううち、お施主・S様がプロスポーツ選手兼インストラクターであること、ヴィンテージ雑貨のコレクターであること、かつて自宅一部をリフォームしたことがあることなどが分かり、それらを通した暮らしならではのリノベーションデザインを探っていきました。
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┃趣味をディスプレイできる特別な空間づくり

Cue:はじめに、リノベーションのきっかけみたいなところからお話を進めていけたらと思います。

S様:はい。そうするとまずCuestudioさんを知るところからになります。商店街は家から歩いてすぐだから毎日のように通るんですけど、実はCuestudioさんの存在をそのときはまだ知らなくて。

Cue:本社オフィスは昔からありましたが、リノベーションに特化したショップがオープンしたのは去年の秋(2016年10月)なんです。

S様:では本当にオープンして間もない頃だったんですね。何気なく歩いていたら、新しい、しかも商店街っぽくない雰囲気のお店ができていて、ずっと気になっていました。それで何回目かにふらっと立ち寄って……。

Cue:そこで完成したばかりの内装のラーチ構造用合板のグリッド棚を見て?

S様:もうイメージどおりでしたね。これをこのまま自宅に欲しいなというくらい。リノベーションしたいという気持ちが俄然芽生えてきました。

Cue:実際同じ仕様でおつくりさせていただきました。仕上がりや使い心地はどうですか?

S様:ものすごく気に入っています。あの、少しわたしの話になるんですけど、いいですか?

Cue:どうぞどうぞ。

S様:わたしはずっと以前から雑貨集めが趣味で、それこそフィギュアのような小さなものからピンボールマシンくらいの大きなものまで、もう何十年と集め続けているんです。そういったものを並べておける場所がなかったので、どうにも困っていました。生活の空間と混同していた部分をすっきり分けたかったんです。にも関わらず買ってしまうんですけど(笑)。

Cue:分かります(笑)。

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S様:そういう空間をずっと欲しいと考えていました。ただし置くスペースがあればいいわけでなく、こういうヴィンテージなものを並べてもちぐはぐにならないような、居るだけで楽しくなるような、そんな“趣味部屋”が欲しかったんですよね。それで、Cuestudioさんで見たディスプレイ棚のテイストが、わたしの頭の中のイメージにものすごく近かった。やっと結びついたという感じです。

┃家族みんなのことを考えた間取りとアイディア

 Cue:そこで次は具体的に内装のお話をしていきたいのですが、デザインコンセプトは、正に今お話いただいたようなテイストを?

S様:そうですね。雑貨屋や古着屋のスタイルというか、アメリカンヴィンテージな感じですね。棚や趣味の空間だけでなく、妻や子どもや、家族の意見も取り入れつつ、ですね。とくに子どもは二人いるのですが、独立した子ども部屋がなかったので。まだ下は3歳ですが、将来も考えて、今のうちに個室を用意することにしました。

Cue:お子様のお部屋はそれぞれ、壁の一部を色塗装で仕上げました。対照的なビビッドカラーがとてもきれいですね。

S様:上の子は青、下の子はピンク。夫婦の寝室はシンプルです。

Cue:インテリア照明、くぐり戸みたいな下部だけが片開きになったアンティークドアだったり、家中のいたるところに珍しいデザインのものが使われていますよね。

S様:寝室のドアは実際にアメリカの田舎の農場で使われていたものを取り寄せました。味があって気に入っています。こういうのも雑貨の延長というか、アメリカから直接買ったり、輸入雑貨仕入れをしている知り合いから情報を得たりで、こつこつと集めていたものを使っています。

Cue:ファストフード店の看板照明や、アメリカの店舗で使われていた何十年物の吊り下げランプとか、古着屋さんにいるような感じがしてわくわくします。

S様:やはりリノベーションなので、やるならやるというか。玄関にオープンクローゼットがあるのも普通じゃ見られないですよね。インパクトがありますが、でもそれだけでなくて。わたし自身の生活習慣を考えての「必然」なんです。

Cue:S様がプロスポーツ選手という「ならではの必然」という意味ですね。

S様:そうです。職業柄、年中全国を回っていて、しかもそれがいつまでかかるか毎回決まっているわけではないんです。新幹線や飛行機に乗るため朝暗いうちに家を出ることも、反対に真夜中に帰ってくることもしばしあります。そうなると、クローゼットが寝室にあると荷造りの物音で寝ている妻を起こしてしまうことになります。

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Cue:なるほど。不定期的にあるとけっこう気を使いあってしまうかもしれませんね。

S様:家族みんなで過ごすわけですから、誰もがリラックスできる団欒の空間でありたいと思っています。だから「必然」なのであって、世の多くのお父さんのようなサラリーマンであれば、このアイディアはなかったんじゃないかなと思います。ふつうのご家庭では、あの玄関やグリッド造作棚よりも、カースペースだったり和室だったりが求められたりするでしょう。

Cue:生活を家に合わすのでなく、生活に家を合わすという、まさにリノベーションだからこそのメリットですね。「趣味」と「習慣」を自然な形で融合させていくイメージというか。

S様:以前と比べて生活がかなりしやすくなり、気分も好いです。

Cue:リノベーションする以前はどんな暮らしだったのでしょうか?

S様:ここにはしばらく住んでいて、数年前にLDKのみ一度リフォームを入れています。そもそもここが、父が経営する賃貸マンションだったというのもありますね。

Cue:たしか去年くらいまでは入居者がいらっしゃったとお聞きしましたが。

S様:そうです。その方が退去されるとのことで、また入居者探しをしようかと考えていたらしいのですが、父の年齢という部分も考え、そのタイミングで募集をやめました。父は上の階、わたしたち家族四人が下の階に住むという形になったわけです。

Cue:ある種、二世帯住宅のような形ですね。

S様:だから思い切ったリノベーションができたというのもありますね。ひとつのマンションに、わたしたち家族しかいないわけですから。工事の音やら共用部やら、お隣近所への気遣いや約束ごとなどに縛られることなく進められたんだと思います。DIYで屋上にログハウスをつくったりもそうです。

Cue:建物によってちがいますが、工事の時間は何時から何時までとか、日曜日は工事を行わないとか、リノベーションを行う上で様々な約束事があります。

S様:ほとんどの方はそうではないだろうから、マンションの管理形態など事前に把握しておいたほうがいいでしょうね。

奥様:(ここでお買い物から奥様が帰ってくる)でも在宅のまま工事をやるのもけっこう大変でしたよ。

Cue:やはり騒音ですか?

奥様:そうです。わたしたちが選んだことなので仕方ないんですけど。これから在宅でリノベーションをやられる方は、それ相応の気構えが必要かもしれないです(笑)。

S様:それでいうと、時期的な部分もあったかもしれないね。11月くらいから打合せが始まって、住み始めたのが2月くらい。

Cue:年末年始という部分ですか?

S様:年をまたいだから、ちょっと時間がかかりました。生活空間とは別れていたので普段の生活にとくに支障はなかったんですけど、工事が止まった部屋を見ているととても待ち遠しい気持ちになりました(笑)。

Cue:そこは本当に申し訳ないと思いつつも、大工さんもお休みに入ってしまうため、どうしても工事がストップしてしまいます。

S様:そうです。だからCuestudioさんや大工さんが悪いとかじゃなくて、これもこれからリノベーションをしようと考えている人へのアドバイスという意味ですね。むしろ皆さんにはこちらの要望をいろいろ聞いていただいて、こころから感謝しています。

┃近い距離、知ろうとすること。

Cue:それにしても、本当にすごいコレクションの数ですね。全体のサイズが2400×3645で、合計24のグリッドを用意しましたが、……すでに溢れていますね。

S様:完全に足りていないですね(笑)。

Cue:でもこの「所狭し感」がまた雑貨屋さんみたいでコレクターゴコロみたいなのをくすぐられそうですね。いったいどのくらいの数があるんでしょうか?

S様:自分でもわからないんです(笑)。もう何十年と集めてきましたから。でもそれに相応しいディスプレイ空間が手に入って、きっとコレクションも喜んでいるでしょう。

Cue:今後も増えていくと思うのですが、何か考えていますか?

S様:今のところは考えていません。新しいコレクションが入る分、手放していく部分もあるので。しばらくは大丈夫ないんじゃないかな。

 Cue:その他にはありますか?

奥様:キッチンのパントリーがあったらいいなと考えています。今もパントリーはあって、IKEAの収納など幾つかの家具をキッチンの背面にL字型に並べて使っているんですが、高さなり使いやすさなり、もうちょっと統一しているといいのにと感じるときがあります。ビルトインで造作して、中段はオープンになっていて、炊飯器とかコーヒーメーカーとか置けるようになっているようなものをイメージしています。

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S様:あとダイニングテーブルと照明の位置かな。あそこには新しいヴィンテージものの照明を吊り下げようと思っているので、そのときまたご相談させてください。

Cue:S様のこだわりやデザインセンスは本当に勉強になります。屋上もすごいですよね。あのログハウスはご自身でつくられたんですか?

S様:はい、つくりました。もともと自分でやるのが好きなので。

Cue:なるほど。あそこまで大掛かりなDIYってなかなか大変だと思うのですが、やはりそこは良い気分転換になったりするからですか?

S様:そうです。屋上に行って何か手作業したり、娘と遊んだりするのも良い気分転換になりますよ。ときどき知人を招いてバーベキューもします。

Cue:最後に、これからリノベーションをしようと考えている人に何かアドバイスはありますか?

S様:わたしたちは本当に上手く対応してくださったおかげで、とくに問題や悩みにぶつかることはありませんでしたけど、強いて言うならやはり時期の問題ですね。どのくらいのボリュームのことをやりたいのかをあらかじめイメージしておくと、そこから工事がどれくらい、実際の住み始めがどれくらいと、ある程度の目処は立てることができると思います。そういう意味では自分で調べて「知ろうとする」姿勢も大事です。あとは「近い距離」という点も、わたし個人としてはすごいやりとりが楽でした。目黒区のリノベーションなら目黒区で探すとか、リノベ会社選びのポイントかもしれないですね。

Cue:ご近所なので何かあったらいつでもご相談ください。

S様:ええ。この距離感は本当に心強く感じています。

Cue:今後も引き続きよろしくお願いします。本日は、長いお時間お付き合いいただきありがとうございました。

インタビュアー/写真撮影:高崎亮太

《DATA》

マンションS様邸

物件:持ち家リノベーション

所在:東京都目黒区鷹番

築年数:1988年10月

構造:RC造3階建

占有面積:80.09㎡

リノベーション完了:2017年

総工事費:約800万円

事例ギャラリー「アンティーク素材×インテリアでつくる70年代アメリカンヴィンテージスタイル」はこちら

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